タグ: 設定

  • EA導入の手順を初心者向けに解説【インストールから設定まで】

    「EAを使ってみたいけれど、何から始めればいいのか分からない」。最初の壁は、手順が断片的に見えることです。本記事では、MT4/MT5のインストールからEAの配置・設定、バックテスト、実運用、VPSによる24時間稼働、そして資金管理までを一連の流れとして整理します。順番に進めるだけで、初心者でも迷わずEA運用をスタートできます。


    EA導入の全体像:ゴールから逆算する

    EA導入は「インストールして終わり」ではありません。最終的なゴールは安定して稼働し続ける運用体制の構築です。そこで、導入を次の五層構造で捉えます。

    1. 環境整備(MT4/MT5・ブローカー・デモ口座)
    2. EAの設置と基本設定(配置・許可・入力パラメータ)
    3. 検証(バックテスト→最適化→フォワード)
    4. 実運用(リスク管理・監視・保守)
    5. インフラ(VPS・自動起動・ログ管理)
      この順番で準備すると、抜け漏れがなく失敗が減ります。途中で不具合に遭遇しても、どの層で問題が起きているか切り分けやすくなります。

    事前準備:プラットフォームと口座を整える

    EAは**対応プラットフォーム(MT4/MT5)**上で動作します。まずはブローカーを選び、デモ口座を開設しましょう。初学者はデモで操作を覚え、EAの癖を掴んでから小ロットのリアルへ進むのが安全です。

    • MT4 or MT5の選択
      既存のEA資産や配布数はMT4が豊富です。検証速度や機能拡張はMT5が優位です。迷ったら「当面はMT4で運用+MT5で検証」を並走すると判断を誤りにくくなります。
    • ブローカー口座の種類
      取引仕様(スプレッド、約定速度、両建て可否、シンボル名称の接尾辞など)がEAの挙動に影響します。EA説明書に「ヘッジング前提」「ECN口座推奨」といった指定があれば、それに合わせます。
    • デモ口座の役割
      バックテストでは見えない約定挙動やスリッページの癖を把握できます。最低でも2週間、可能なら1か月はデモで動かし、ログを確認しましょう。

    MT4/MT5のインストールと初期設定

    ダウンロードとインストール

    ブローカーの公式サイトからインストーラを取得し、OSの指示に従って導入します。複数ブローカーを使う場合、インストール先フォルダ名を分かりやすく分離しておくと、データ混在を防げます。

    初回起動とログイン

    初回起動後、ファイル → 取引口座にログインから、デモまたはリアルのログイン情報を入力します。サーバ名が複数ある場合は、口座発行時の案内に合わせます。ログイン成功は「ターミナル→ジャーナル」タブのログで確認できます。

    データフォルダの開き方

    ファイル → データフォルダを開くで、EAを配置する対象フォルダにアクセスします。

    • MT4:MQL4/Experts(EA本体)、MQL4/Indicators(指標)、MQL4/Presets(設定プリセット)
    • MT5:MQL5/ExpertsMQL5/IndicatorsMQL5/Profilesほか
      この「データフォルダ」が、EAにとってのホームディレクトリです。

    EAファイルの配置と認識

    拡張子と配置先

    EAの拡張子は、MT4なら.ex4(ビルド済み)や.mq4(ソース)、MT5なら.ex5/.mq5です。EAは必ずExpertsフォルダに配置します。Indicatorsに入れると認識されません。

    再起動とナビゲーター更新

    配置後は、プラットフォームを再起動するか、ナビゲーター(Ctrl+N)→EA一覧で右クリック→更新を実行します。EA名が一覧に見えれば読み込み成功です。表示されない場合、フォルダ階層や拡張子を再確認します。

    セキュリティ許可

    EAによってはDLLの使用WebRequestの許可が必要です。EAの説明書に指示がある場合、ツール → オプション → Expert Advisorsで該当項目にチェックを入れ、必要なURLを許可リストに登録します。許可がないと外部連携やニュース取得が動作しません。


    チャートへの適用と基本設定

    チャートにEAを適用する

    EAをドラッグ&ドロップで対象チャートに載せます。左上にニコちゃんマーク(MT4/MT5の笑顔アイコン)が表示され、**AutoTrading(自動売買)**ボタンが有効なら稼働状態です。怒り顔や無表情は無効状態を示します。

    「全般」タブと「入力」タブ

    • 全般:ライブ取引を許可、DLL使用、外部エキスパート呼び出しなど、EAの権限を設定。
    • 入力:ロット、ストップロス/テイクプロフィット、トレーリング、取引時間帯、MagicNumberなどEA固有のパラメータを設定します。MagicNumberはEAごとに異なる値にすることで、複数EAのポジションが干渉しにくくなります。

    通貨ペアと時間足の合わせ込み

    EAは想定の時間足や通貨ペアで動かす必要があります。説明書に「EURUSD・M15想定」などの記載があれば必ず合わせます。例外設定で動かすと、シグナル頻度や損益曲線が大きくずれます。


    バックテスト:導入前の健康診断

    ストラテジーテスターの基本

    • 期間:短期だけでなく、相場の局面が変わる数年単位を取ります。
    • モデル:MT5なら実ティックや1分データからティック生成を選択。MT4では可能な限り精度の高い方法を選びます。
    • スプレッド:固定値だけでなく、可変スプレッドを再現できる条件で検証すると実態に近づきます。

    見るべき指標

    • 勝率・平均損益比:勝率が低くても損益比が高ければ成り立ちます。
    • 最大ドローダウン(DD):資金計画の要。口座破綻ラインを推測する基準です。
    • プロフィットファクター(PF):1.2〜1.5でも、安定DDなら実務で使えます。数字だけで判断せず、収益曲線の形を必ず確認します。

    最適化とオーバーフィット回避

    最適化は便利ですが、**過去相場への当てはめ過ぎ(オーバーフィット)**を招きます。

    • アウトオブサンプル期間を設け、そこでの成績で生き残るパラメータを採用する。
    • 粗い→細かいの順でパラメータ探索を行う。
    • 単一のベスト値ではなく、近傍でも成績が崩れない“台地型”の解を選ぶ。
      これらを守ると、フォワードでの崩壊が大幅に減ります。

    フォワードテスト:実運用の予行演習

    バックテストで手応えがあれば、デモ口座でフォワードを行います。

    • 期間:最低2週間、できれば1〜3か月。
    • 監視:ターミナルの「エキスパート」「ジャーナル」ログでエラーやリジェクトを確認。
    • 経済指標:雇用統計や政策金利などの大型イベントは、事前に取引回避の方針を決めます。EAの設定に指標フィルターがなければ、手動で停止・再開のルールを作ります。
      フォワードでドローダウンの出方や連敗の癖が見えます。そこで耐えられるロットか、そもそもEAの相場適合が続いているかを評価します。

    実運用:最小リスクで始める

    ロット設計と資金管理

    初期は極小ロットで始めます。1トレードの想定損失が口座残高の1〜2%以内に収まるよう逆算するのが基本です。複数EAを同時運用する場合は、同時ドローダウンを考慮し、合算で最大許容損失を超えないようにします。

    稼働監視とアラート

    • メール/プッシュ通知で異常終了やエラーを受け取る設定を用意。
    • ログは定期的にアーカイブし、肥大化を防ぎます。
    • 週次で損益・DD・取引回数を集計し、想定レンジから外れたら停止・見直しの判断を徹底します。

    ルール化の重要性

    「いつ止め、いつ再開するか」を数値で言語化します。最大連敗数、連続損失額、指標カレンダーの扱いなど、恣意性を排した基準を先に決めると、感情的な操作で負の連鎖に陥りにくくなります。


    VPSで24時間安定稼働する

    選定ポイント

    • ロケーション:ブローカーのサーバに地理的に近い場所を選ぶとレイテンシが下がります。
    • CPU/メモリ:MT5で複数EAを並走するなら、コア数・メモリは余裕を持たせます。
    • OS・再起動:Windows Server系なら自動ログイン・自動起動の設定が容易です。

    自動起動と保守

    • OS起動時にMT4/MT5を自動起動するタスクを設定。
    • 週次でOS再起動の保守時間を設け、アップデート→再起動→稼働確認の手順をルーチン化します。
    • RDPセキュリティや二段階認証、強固なパスワードで不正アクセスを防ぎます。

    トラブルシューティング:よくある詰まり所

    取引が実行されない

    • AutoTradingが無効、チャート右上が笑顔でない
    • ロット下限・上限や**最小距離(Stops Level)**に抵触。
    • シンボル名が異なる(EURUSD.mのような接尾辞)。EAの設定で対応シンボルを増やすか、正しい銘柄に変更。

    エラー頻発・遅延

    • ログにtrade context busyoff quotesが多い:通信や約定環境が不安定。VPSロケーションやブローカーの再検討。
    • 指標発表時にスリッページ拡大:その時間帯は取引停止のルール化が有効。

    成績が急変

    • 相場 regime の変化(レンジ→トレンド)。パラメータを**“台地型”の安定解**から選び直す。
    • 同時稼働EAの相関増大。ポートフォリオの相関マトリクスを見直し、似た挙動のEAを減らす。

    リスク管理:生き残るための最重要パート

    EAは「勝つ仕組み」である前に「負けを制御する仕組み」でなければなりません。

    • 最大DD許容:口座残高の何%まで許容できるか。許容を超えたら停止。
    • 1トレード損失:1〜2%を上限目安に。複利を使う場合も、DD拡大局面では**逓減(ロット縮小)**するルールを用意。
    • 分散:通貨・時間足・ロジックの分散で同時DDを緩和。
    • 資金分離:EA口座と裁量口座、短期と長期の資金を分け、同時破綻の連鎖を遮断。
      この4点を明文化して運用ノートに貼っておくと、苛烈な相場でも判断がブレません。

    まとめ:導入チェックリストと次の一歩

    EA導入は、環境 → 配置 → 検証 → 実運用 → インフラの順に積み上げるとスムーズです。最後に要点を補助的に箇条書きで再確認します。

    • デモ口座で操作と挙動を把握し、2週間以上のフォワードを実施
    • 想定通貨・時間足・口座仕様(ヘッジング/ネッティング)をEAに合わせる
    • バックテストは長期×複数局面、最適化は台地型の安定解を選ぶ
    • 実運用は極小ロットから開始、1トレード損失は1〜2%
    • 大型指標前後の運用ルールと停止・再開基準を数値で定義
    • VPSはロケーション・コア数・自動起動・ログ保守を標準装備

    次の一歩としては、この記事の順番どおりにチェックを進め、まずは1本のEAをデモ→極小ロットで回してみてください。週次でログと損益をレビューし、ルールに反しない範囲で改善を重ねます。導入が一巡したら、相関の低いEAを組み合わせ、分散と規律でポートフォリオを整えていきましょう。EAは魔法の箱ではありませんが、正しい手順と管理さえ守れば、あなたの時間と感情から取引を解放してくれます。